キュートなカタチのお薬

バラバラになってしまった、脚本、小説、エッセイ等々もう一度組合せ、凝りもせずブログ再開します。
実際の俳優さんや女優さんのお名前が出てまいりますが、まったくご本人様とは関係がございません。
あしからず。。。。。。。

狐・夜

「やへいさん、やへいさん、開けてください。」
木戸に佇む細身の女、返事がないのに立ち去ろうとしない。


「出ちゃならん、出ちゃならん。」
居留守を使う、やへい。
やへいは見てしまったのだ。
峠の分かれ道で女が狐に戻るところを。


「俺は狐とやっちまった。
 知らなかったのだ。
 忘れろ、忘れろ。」
布団をかぶって呟くやへい。


女の声がやみ、コトリと音がした後、静かになった。


外が気になるやへい、戸をそっと開けてみる。
夜風が家に入り込む。


「やへいさん」
ぎょっとして振り向くやへい。
家の中の畳の上に正座して三つ指着く、女。


「くり子、い、いつの間に。」


ひとりでに開いたままの戸が静かに閉まる。
慌てて戸を開けようとするやへい、気がつくと自分の煎餅布団の中。


女がやへいの足の指を舐める。
「何故、居留守など使うのです。
 もう、くり子が嫌いになりましたか。」
「おまえ、どうやって家に入った?」
やへい、やっと声に出し、女に訊ねる。


「もう知っているのでしょう。
 私が何なのか。
 嫌いになったのですね。」
そう言った女、やへいの髪を細い白い指で撫でる。


震えるやへい、体が動かぬ。
もはや女に触れられるのは苦痛でしかないのだ。


戸の隙間から夜風が再び家に吹き込む。


やへい、瞬き一つ。
消える女。



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